あれほど暑かった夏も過ぎ去り、すっかり秋めいてまいりました。暦では「晩秋」と言われ、各地で五穀豊穣を祝う神事や祭りごとが行われます。酷暑に地震、台風と自然の力の偉大さに驚かされますが、その大いなる自然に敬意を表しつつ、変化を受け入れ、順応していくことが求められているような気がいたします。
前号に引き続き、7月6日から10日間行ってきたドイツ研修についてお伝えしたいと思います。
ドイツは国土面積357,376k㎡。日本が377,835k㎡と日本より少し狭いくらいの広さであり、緯度はドイツ南部と北海道がほぼ同緯度に位置します。そのため、気候は日本より冷涼で乾燥しています。ドイツは国土の半分以上が農場で、農業の盛んな土地です。穀物畑はドイツ全土の約1/5。穀物はパンの主要となる原料であり、小麦栽培は南部、ライ麦栽培は北部が盛んで、これが各地方のドイツパン文化に影響しています。一日三度の食事は、朝食は小型パンを中心にしっかり食べる傾向があり、夕食は簡単に済ませるそうです。大きなパンをスライスし、ハムやソーセージ類、チーズなどの冷たいものと一緒に食べられます(コールドミール)。もっともボリュームがあるのは昼食で、温かい料理を食べます。日本で販売されているパンのほとんどは、なるべく新鮮なうちに食べるのがよしとされています。ドイツも小型パンは同じですが、大きな重いパンは日持ちがするため、保存容器に入れ、保管します。湿気の多い日本とは異なるため、カビにくい環境であるという背景があり、ドイツの環境では大きなパンを1週間かけて少しずつスライスして食べていきます。ドイツ南部では、ブロートツァイト(brotzeit)と呼ばれる食習慣があります。三度の食事以外にとる軽食のことで、パン、ハム、ソーセージ類、チーズが数種類盛り合わせられ、生野菜やピクルスの付けあわせが出てきます。日本にご飯が進むおいしいおかずが数多く存在するように、ドイツにもパンが進む食材が豊富にあります。もちろん、ビールやワインなど醸造酒ともとてもよく合います。
最後に、今回の研修で心に残ったことをお伝えします。
①パン(パン造り)というものが人々の暮らしに欠かせないものであるということ。
②パンの歴史は古く、小麦、ライ麦など穀物を加工し、パン酵母という自然の恵みを生かして美味しく、私たちの生きる糧に変えているということ。
③パンは単なる商売道具ではなく、材料、製法、販売方法など自然と環境、人々の暮らしと密接に関わりあっていて、その人々の心を豊かにするものであるということ。
④パン店は安心、安全な食をそこに暮らす人々へ安定して継続的に供給していくことが使命。継続させていくためには、そこで働く人々が安心して、やりがいをもって働ける環境にしていくことが大切であること。
これからの木輪の進むべき方向性として今回学んだことを生かしていきたいと思います。