恩を石に刻む

  明けましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になり、誠にありがとうございました。本年もさらなる品質サービスの向上に向け、気持ちを新たに取り組んでまいりますので、お気づきのことは何なりとご指導いただければ幸いです。変わらぬご愛顧のほど、心よりお願い申し上げます。

 さて、私の好きな言葉のひとつに「刻石流水(こくせきりゅうすい)」という言葉があります。「受けた恩は石に刻み、かけた情は水に流しましょう」という意味です。

 周りからの様々な恩恵を受けながらも、さも当たり前かのようにふるまったり、その恩恵をうっかり忘れてしまったりすることがあります。また、反対に、相手に何かを施したときに、その見返りを期待したり、何も反応がないことに腹を立てたりすることもあります。

 私が20代半ばで、電子部品の営業マンとして勤めていたころのことです。独身でしたので、毎晩のように先輩や同僚と食事に行っておりました。上司や先輩と行くときには会計時にその大半を支払ってもらっていました。店から出た後は「ごちそうさまでした」と必ず言うようにしていました。年月が経つにつれて、徐々に後輩が増えていき、いつの間にか飲食代の多くを支払ったり、ご馳走したりする機会が多くなってきました。そういう立場になると、「ごちそうさま」の一言も言えない後輩が気になって仕方ありませんでした。ところが、ある時、そのことを先輩に話したところ「芳野も感謝が伝えられていないときがあるよ」と言われて、とても衝撃的でした。自分は感謝の言葉を伝えていると思っていただけに、恥ずかしい気持ちになりました。そして、自分のことは棚に上げて、他人のことばかりに気を取られていることについても不甲斐なさを感じました。それからは、何かしてもらったときには、その場で感謝を伝えることはもちろん、後日会ったときには忘れずにもう一度感謝を伝えるようにしています。なかなか会えない方であれば、すぐにお礼のハガキや手紙を書くようにしています。

 冒頭にも申し上げましたが、旧年中はお客様をはじめとして、スタッフや関係会社の方々など多くの方に大変お世話になりました。今年も一年、これまで受けた恩を心の石に刻み、その恩を何らかの形で返す(恩返し)、もしくは、周囲に同じように施す(恩送り)という形で果たしていきたいと思います。