「伝えることで、主体性のある学びができるようになる」。そう思えることがありました。
私の学んでいる素心学(池田繁美先生)では、その学びの型を「学・思・行・伝」として、この「学・思・行・伝」のサイクルを回わすことで学びが深まりますと教えていただいています。
「学」とは、基本を学び仲間と研鑽し合う。「思」とは、学んだことを自分自身に置き換えて思い返す。「行」は、その学びを生かして行動する。そして、さらに学びを深めるために伝える「伝」。
素心塾で五年間素心学を熱心に学んでおられるAさんは、さらに学びを深めようと、素心塾の"要論講座に進まれ、今年四月みごと准講師の試験に合格されました。准講師の大切な役割は、正講師をめざし、学びをさらに深め周囲の人に素心学を伝えれるようになることです。
さて、そのAさんに、さっそくの試練がやってきました。素心学の一部の箇所を塾長である池田繁美先生や多くの素心塾塾生の前で伝える(講義をする)時がきました。事前の勉強会(講義の二週間ほど前)でレジュメの書き方や伝え方などについて、他の塾生からいろいろアドバイスを得、持ち帰って改めて修正し、練習し、本番に臨みました。結果は努力の甲斐あって、みごとな講義でした。事前勉強会より、大きく成長したあとが見られました。知識もより深まったことがわかりましたが、何といっても講義そのものが落ち着いて、間をとりながらの講義でとてもわかりやすく、内容もしっかり伝わったに違いありません。これまで素心学を学び、自分に置きかえて思い返し、その学びを行動してこられましたが、やはり、これまでの学びは、どちらかと言うと受け身の学びという印象でしたが、今回「伝える」ということを意識することで、一気にその学び方に主体性が加わったと感じました。伝えることで自らすすんで学んでいこうと主体性のある学びができるということをAさんを通して感じることができました。
これまで「学・思・行」で止まっていたものがそれに「伝」が加わることで、「学・思・行・伝」のサイクルが止まることなくまわりはじめました。伝えることで、主体性のある学びができると、そこに新たな疑問が生じます。その疑問を解決すべく新たな学びがはじまるのです。
もう一つ、Aさんを通して感じたのは、
「素心学を教えるのではなく伝えることが大切である」ということです。周囲の人に「教える」となると「私はまだまだ未熟だから人には教えられない」となるのです。しかし、「伝える」と考えると「私が学んだこと(たとえそれが初歩的なことであったとしても)をこのように学びました。」と学んだ範囲で伝えればよいのです。「教える」という態度になると、そこに高慢な心が介在しやすくなることも気をつけなければなりません。「伝える」ことを早い段階からとり入れることで「学・思・行・伝」のサイクルが早期からまわり始め、学びも深まると思います。
2017年8月 319号より 芳野 栄